疫病のまん延を防ぐために、科学者や医療関係者がたゆみない努力や研究をしている。インフルエンザはもちろん世界を震撼させた新型コロナさえ、予防接種や各自の衛生習慣の改善で、皆無とまではゆかないがコントロールできるようになってきた。
 臆病な私は時期が来れば進んで予防接種を受けるようにしている。おかげでここ何年もインフルエンザにかからず、コロナもごく軽く済んだ。接種による副作用も極部が重く感じられる程度だった。なのに、なぜか帯状疱疹の予防接種だけは意識のどこかで避けてきた。
 10年ほど前に勧められた頃は保険を使っても個人負担が2回の接種で300~350ドルかかったものだが、今や無料である。しかも、亡くなった母が70歳後半で背中から膝あたりまで帯状疱疹にかかり、当時はまだ治療薬も開発されておらず、痛みで夜も眠れないほど大変苦しんだ。それを知っており「いずれ、それもできるだけ早く接種を受けなければ…。こうしているうちにも誰かからうつされるのでは…」と、何やら恐怖観念に襲われることもあったのに、その注射のためにドラッグストアに行くことをためらっていた。ドラッグストアには処方薬を受け取りにしばしば行くのだが、帯状疱疹のことは口にしたことは無かった。
 3月初めの定期検診で私の記録をコンピューターで見ていた医師が、「えっ、まだ帯状疱疹の予防接種を受けていないの?」と驚いたように私の顔を見て、「すぐに行くように」と強く勧めた。その言葉に押されてドラッグストアに行き、ちゅうちょしながら薬剤師に声をかけると、愛想よく5分も待たずにコーナーに呼び入れられて、10年以上先延ばしにしていた接種は1秒で済み、「2カ月したら2回目忘れずに受けてね」と笑顔で送り出してくれた。
 「なんだ、たいしたこと無いじゃん」と腕に張られた赤いばんそうこうに独り言を言ってみた。
 それからちょうど2カ月目、ドラッグストアからはリマインダーのメッセージが留守電に残されていて、今度はいそいそと出かけて行き、2度目の接種完了。
 その翌日、1日中微熱があり、食欲はなく、体中がだるく、私は初めて予防接種の副作用を体験したのでありました。(川口加代子)

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