

ロサンゼルスで古典日本舞踊を指導する坂東秀十美師がこのほど、小東京の日米文化会館ドイザキギャラリーで勉強会を開催し、秀十美師の舞踊教室で学ぶ弟子21人が日頃の成果を発揮した。会場に踊り用の舞台である「所作台(しょさだい)」を設置し、出演者は本格的な舞台衣装を身に着けて、伝統舞踊19演目を披露した。
幕開けのご祝儀「扇三番叟(おうぎさんばそう)」(坂東拡春美)に続いて子どもの生徒が舞台に上がり、舞踊小曲「お月様」(コートニー・カナエ・みえこ・スー、6歳)、長唄「菊づくし」(田中エマ愛美、3歳)、舞踊小曲「藤の花」(スティーブンス桧、9歳)、同「桜禿(さくらかむろ)」(ブラカモンテス・デビン・れいこ、10歳)などを踊った。これらは、幼少期に日本舞踊を習ったことがある人ならとても懐かしく感じるであろう、子ども向けの伝統曲だ。3歳から16歳までの年の若い生徒計11人はあどけないだけでなく、誰もがしっかりと踊りを覚え、堂々と踊ってみせた。

日本舞踊といえば日本人形のような美しいいでたちが定番のように思えるが、秀十美師の勉強会で披露された演目はバラエティーに富み、演者は町娘や芸者、奴(やっこ)や三番叟(さんばそう)、ウサギやキツネやタヌキといった動物、花の精などにふんし、歌舞伎と古典日本舞踊の幅広さとを魅力をあまねく伝えた。
舞台用の日本髪かつらは「床山師」の豊谷一弘さん(かつら徳々屋)が、舞台衣装の着付けは専門家である磯貝隆子さん(松竹株式会社衣裳)がそれぞれ日本から駆けつけ、かつら合わせや衣装合わせを含めて秀十美師を補助した。全体を通じて古典伝統芸能を正しく米国で継承せんとする志が感じられた。
名取の踊りは幕開けの他に、坂東秀静美と坂東秀礼美の2人による義太夫「二人三番叟」、そして最後は秀十美師が大和楽「雨」をしっとりと美しく踊り上げた。

日本舞踊の代表曲の一つとして知られる「藤娘」を美しい藤の精の姿で踊ったローミングみえこさんは日系人で、ベンチュラ郡のオーハイから駆けつけた家族に見守られながら初舞台を終えた。みえこさんの姿に目を細める95歳の祖母サリー・イワタさんは、「何十年も前、小東京にあった日本舞踊教室に娘たちを通わせていた頃を思い出す」と懐かしそうに話した。オーハイで商売をしており、毎週月曜日、店が終わってから車で1時間以上かけて小東京まで来ていたのだそうだ。母のキミさんは、家で練習を重ねるみえこさんを見てきただけに「とても緊張した」と言うが、「その成果が出たことに喜んでいる」と話した。みえこさんは「日本舞踊を学ぶことで、自分が継承している『日本』に近付ける気がする。先生は全てを(英語で)上手に説明し、忍耐強く、徹底して教えてくれた」と話す。また、「日米文化会館で公演したことは特に、日本の歴史や日系のコミュニティーとつながる良い方法として意義深い」とも述べた。

この日公演のために用意された160席の座席は完売し、観客からは生徒の日頃の努力と、古典日本舞踊の舞台美への賞賛の声が聞かれた。公演後には「舞台を見て昔の思い出がよみがえった」「気分が明るくなった」「お弟子さんが一生懸命踊る姿に感動した」などの反響があったという。秀十美師は「良い感想をいただいてうれしかった。『一生懸命に何かをする姿は伝わる』と確信した」と話し、「日本から来てくださったお2人をはじめ、お弟子さんとその家族、友人や家族など多くの人の助けがあったからこそできた公演だった」と、心からの感謝を述べた。
秀十美師の勉強会はこれまでパサデナの日本文化会館などで開催してきたが、「今回は小東京で開催することにこだわった」と話している。小東京には日系の土壌があり、文化の継承において重要な場所であることを改めて考えさせられる。古典芸能や伝統文化の継承は時間がかかるものかもしれないが、古典だからこそまかれてから数十年後に花開き実を結ぶ種なのである。 (長井智子、写真も)


