1950年代にコンピューターが商業ベースで市場に導入し始めた頃から、既に本格的なAI(Artificial Intelligence=人工知能)の開発、研究も着手されており、時代を経て近年著しく発展した。言語の自動翻訳もお見事である。アルゴリズム解析の恩恵か、利用が増すにつれ進化し完璧に近い。学習能力は人間の頭脳をはるかに超える。
無人タクシーや配送車、掃除ロボット、医療関係サポートロボットなど、AIの活用用途は幅広い。言い換えると、従来人間が労力を費やした作業を代替する。
例えば、遂行目的を指示する緻密なテキストを入力すると、AIは音声処理・加工、画像や動画を生成する。それも安く即座にだ。格段に便利だが、エンターテインメント業界での既存の雇用機会の激減は避けられない。全米俳優協会(SAG)は将来に向けて生存競争を危惧する。このような流れを受けてニューサム州知事は先週、俳優の肖像のデジタル生成物による画像・映像・音声の無断複製と使用を規制する新たなカリフォルニア州法案に署名した。AI関連は約50法案に及ぶ。
選挙前のこのタイミングでの意図は、「ディープフェイク」による悪影響を防ぐ目的も含む。「ディープフェイク」とは、悪意な目的で合成された偽動画や画像、音声を指すが、本物と見分けがつかないほど高度な技術がある。
果てしなく伸び代があるAI産業はカリフォルニア州にとっても新たな経済基盤を生む。州知事は柔軟性を持って民意と巧(うま)くバランスを取る手腕が問われる。
AIの進歩はもう止められない。映画フィルムがデジタルに取って代わり、ネガ編集者、映画館の映写技師、現像所…が淘汰された。やがては脚本家、CGアーティスト、衣装係、ポスターのデザイナー、ロケ地での撮影敢行も必要なし。AIが機械一つで全過程を制作し、衛星ネットで世界中の消費者のスマホに同時自動配信だ。極論はプロデューサーも不要?
振り返ると、野球場が人工芝になり、駅が自動改札になり、タイピストが消えた。今後、学校の先生、スーパーの店員も消え、政策もAI、軍事もAI、平和会議もAIなのか。「人間らしさ」の思考回路、行動様式、価値観と共存、調和でき、「感情を理解できる?」AIに期待と不安が募る。(長土居政史)
