1年ぶりに日本を訪れた。米国籍を取得したが、人生の半分近くは日本だったし、今も日本語を使う。やはり自分は日本人のままだ。長年海外にいても、日本の歴史、建築、文化は魅力が多い。中でも日本食はすごい。日本のレストランは、どこも安い、うまい、サービスが良いというフード・パラダイス。以前にも増して、エスニック料理も充実して、ますます種類も豊富だ。
 今回の帰国の目的は今年で88歳を迎える両親に会うためだった。健康とはいえ、母は認知で、父は足腰が弱ってきている。だから近所の親戚を訪問する以外、どこにも行かなかった。それでも、共に時間を過ごすことは、日本を離れて32年暮らす親不孝者には、唯一できる親孝行だった。
 一緒にいると2人は決まってうたた寝を始める。時に自分も一緒に眠りに落ちた。食事は近所のスーパーで出来合いのものやインスタント、冷凍食品で済ませたが、他愛もない話題をつまみに酒を飲みながら、食事をすることはかけがえのない時間だった。
 そんな父が、91歳になる姉がいる故郷へ連れて行ってほしいと言った。体力も衰えているし、認知の母を連れての旅は荷が重いが、それでも自分自身、父が生まれ育った長崎県には思い入れもあるし、ルーツでもあるから、一緒に行けたら貴重な体験にもなる。今回はスケジュールの関係で実現できないが、年内に必ず日本を訪れ、父の願いをかなえてあげることを心に誓った。
 ところで、滞在中、スーツが必要になったが、持ち合わせていなかったため、もう着なくなったという父の背広とシャツを借りた。これが中々好評だった。そして、出発前なぜか心が求めるので、それらの服を貸してもらい米国へ戻ることにした。
 両親がそろって米国に来たのは1999年一度きりだ。米寿を迎える2人を、もはや米国へ連れてくることはできないが、自分が父のスーツを着て、一緒に旅することはできる。昨日デトロイト美術館のイベントで仕事をし、父の背広をデビューさせたが、なぜか父の満足げな顔が頭に浮かんできた。こんな親孝行も悪くない。(河野 洋)

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