詩吟を中核に、さまざまな日本伝統文化を学ぶ異分野の団体が一堂に介して成果を発表する恒例の「秋季大会」が開催され、6分野が華やかに競演した。同大会は在ロサンゼルス日本総領事館の後援を受け、毎年トーレンスの都ハイブリッドホテルで開催し11年目。生徒が日頃の鍛錬の成果を披露する場となっている。

構成吟を披露し拍手を受ける、「吟道加州朗詠会」の師範と師範代。山村会長(左端)や前田大会副委員長(右から2人目)を中心に、他分野と協力して発表を重ねることで、詩吟の裾野を広げている
主催の「吟道加州朗詠会」(山村紅清会長)、長唄の「みのり会」(杵屋勝美典師)、「日本文化書道米国連合会」(岩倉美石会長)に沖縄舞踊「宮城流能松会」(宮城能松師)が加わった。個人では落語・伊勢や大福さん、日本舞踊・髙月華和(こうげつ・かお)さんが参加した。

詩吟は会員の経験に応じて無号、雲号、清号、そして構成吟の4部に分かれて発表を行い、ビデオ出演を含む30人超が吟詠を披露した。師範代と師範による構成吟「盛唐の詩人」では、「山中問答」(李白)、「絶句」(杜甫)、「竹里館」(王維)、「春曉」(孟浩然)など、中国唐王朝最盛期にあたる盛唐時代(7世紀後半〜8世紀半ば)の作品を朗詠した。

書道吟を披露する文化書道の岩倉さん(右)と大澤さん。この大会がきっかけで生徒が増え、新しい書道教場を開いたという
文化書道米国連合会は今年も、丁寧な表装を施した生徒の書道作品を多数展示。会場内やロビー、廊下に並ぶ力作が来場者の目を引いた。またステージでは、書道の草書・行書・楷書書き分けの実演と説明、そして「書道吟」を披露した。吟道加州朗詠会の中下力男さんがフルートで伴奏し、詩吟尚道会で師範・岩倉国寿の吟号を持つ岩倉美石文化書道会長が七言絶句の漢詩、李白作「山中にて幽人と対酌す」を朗吟。それに合わせて、大澤悦静さんが画仙紙に向かって筆を走らせた。3人の息の合った熱演に大きな拍手が送られた。

「みのり会」の発表。上段右から2人目が会主の杵屋勝美典師
「みのり会」は主宰の杵屋勝美典師、杵屋勝典慶さんと高見依子さんを中心に生徒が舞台に上がり、19世紀後半に作られた2曲の長唄「末広狩」と「岸の柳」を演奏した。

これまで参加してきた津軽三味線「佐々木光露会」は主宰の佐々木光露師が日本に永住帰国したため出演がなく、一方で新しく参加した沖縄舞踊「宮城流能松会」は、生徒たちが多彩な衣装とスタイルで5曲を披露した。現在も祭りで踊られる民族舞踊、琉球王朝で発達した宮廷舞踊、明治以降に生まれた雑踊りなど。多様な様式を見せ、観客は沖縄舞踊の奥深さを堪能した。


日本舞踊の髙月華和(こうげつ・かお)さんは小曲「木曽もみじ」を踊った。また、落語家・伊勢や大福さんは定番演目「一杯のかけそば」を巧みな語り口と演技で披露し、会場を笑いと感動に包み込んだ。
本大会は毎年、副題として社会貢献を掲げており、今回は多くの死者を出したミャンマー大地震への義援金を募った。

日本の伝統芸能文化を祖国から離れた地で継承し、さらに発展させていきたいという思いの下に始まった本大会。異なる分野の指導者が協力し、今年11年目を迎え、見学者数も年々増加しているという。朗詠会の山村会長はあいさつの中で、「詩吟単独の会では、なかなかここまで広がらないが、この大会には先見の明があったと、ひそかに自負している」と述べた。
大会副委員長の前田龍清さんは、「詩吟は日本の伝統文化の中でも非常に地味で、なかなか人が増えなかった」と振り返る。伝統文化の楽しさを知ってもらうために異種混合のイベントを始めた結果、今年はに5人の生徒が入門した。この傾向は他の分野でも見られる。「修練も大事だが、殻に閉じこもらず、オープンにして、楽しさを伝えることが重要」と強調した。
異分野の協賛を10年続けてきた、その積み重ねが11年目にして実を結び始めている。
「日系社会の中で私たちのように頑張り、そして楽しんでいる人がいるということを知ってもらえたらうれしい」と関係者は口をそろえた。
(長井智子。写真も)

発表会後の懇親会で労をねぎらう主催者ら。回を重ねて息もぴったり。
