明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
 2026年の年明けの騒動は米国が、というよりトランプ大統領がベネズエラを奇襲して、ニコラス・マドゥロ大統領夫妻を拉致・拘束したことで、めでたさも中くらいになってしまったが、個人的には穏やかな新年を迎えることができた。
 年を取るたびに日本のお正月の習わしの多くがカットされ、今年は手作りのしめ縄もどきをドアに飾り、1人分のお雑煮を用意しただけだった。それでも年が変わったというだけで、今年こそやらねばならない事柄の二つ、三つは浮かんでくるものだ。
 さぁ気を入れて頑張ろうと思ったところで、担当のプログラム「お話会」の開催が目の前に迫っていた。パンデミックの頃は多くて3、4人の参加者だったこの集まり、今月は38人に増えて、テーブルの配置から工夫せねばならず、うれしい悲鳴をあげた。この集いに、久しぶりに日本から帰国中の東京工業大学に籍を置く安納真理子准教授が参加された。
 安納准教授はシカゴ生まれの日系新2世である。英語による能狂言「命のビザ」の制作・上演準備のために帰国している。これは、第2次世界大戦が激しさを増すリトアニアで、ナチスの手を逃れようとするユダヤ人に、夜を日に継いでビザを発給して日本への国外脱出を助けた杉原千畝(すぎはら・ちうね)副領事を描いた作品だ。2年越しのプロジェクトで、現在はシカゴ地域での上演準備と、コミュニティーの支援を呼びかけている。今秋10月23、24日の両日、スコーキーのオークトン大学での上演は決定したが、集客や資金の捻出などご苦労も多いことだろう。
 人間の限りない欲のために、地球上には戦火の絶え間がなく、今ほど人の命がおろそかにされている時代はないように思う。こんな時代だからこそ、80余年前、自らや家族の危険も顧みずビザを発行し続け、多くのユダヤ人の命を救った杉原千畝の物語を伝えたい。米国人はもちろん、日本人にとっても日常ではなじみの薄い「能」という形式で、しかも英語で上演するという挑戦に拍手を送り、その成功を祈りたい。(川口加代子)

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