「日が長くなりましたね。うれしいわ」。ひな祭りで会った知人の開口一番のあいさつだ。樺太と同じ北緯47度にあるシアトルは、冬至の頃は日の出が午前8時直前、日没が午後4時20分と、1日の3分の2が暗い。それが2月に徐々に明るくなって水仙、ムスカリ、ヒースと咲き始め、3月に入ると花桃が住宅街に一挙に色を添えている。
この季節はまた、タックスリターンの季節でもある。学生家族の頃は、納めた税金が戻ってくるのがうれしく、返還金で小旅行に出た思い出も。タックスリターンはできるだけ早く終わらせ、それは夫が卒業してからも続いた。
夫が一時的に日本で働くようになると、申告手続きも複雑だろうと専門家に依頼するようになった。銀行などからの書類をまとめて持参し、数週間後に出来上がった申告書のコピーが届くと、必要書面に署名して手数料の小切手と共に郵送。そうやって毎年の義務を果たしてきた。
ところが今年に入って大きな変化が起きた。担当者が遠方に越すことになり、「リモートでよければ引き受けます」との言葉に「お願いします」と言ってしまったのだ。
まず申告資料の送付は、書類を撮影しメールに添付して送り出すことで解決。数日たつと、出来上がった申告書類がメールに添付されて送られてきた。目を通し、保管用に印刷する。問題はこの後で、「IRSに書類を送るためのオーソライゼーションフォームに署名して、PDFまたはJPGにして返送して下さい」「手数料はZelleまたはVenmoで送って下さい」とある。
聞きなれない言葉ばかりに一瞬、リモートは自分には無理だったと深く後悔。子どもにSOSを出すことを覚悟した。ところが幸いなことに、グーグルで探すとヒントが見つかり、その指示通りに手順を進めると何とか解決。現在ヨーロッパ在住の担当者への書類送付も手数料支払いも、無事終えることができた。
こうして3月は、これまで敬遠していた「今の時代の常識ツール(らしい)」を否応無しに使う、チャレンジングな月となった。今後活用することもできそうで、少し世界が広がった思い。今年のタックスリターンをどうにか切り抜け、春を心おきなく楽しめそうだ。(楠瀬明子)
