日本の外務省が毎年米国で実施している世論調査で、「アジアでの最重要パートナーは中国」と答えた人の割合が39%と、「日本」との回答(31%)を初めて上回った。日本の新聞は口を揃えて失望感をあらわにした。「日本は中国に抜かれた」「中国の存在感が増した」
 果たしてそうなのだろうか。
 いつごろからPartnerという英語がパートナーと訳されるようになったのか。何でも米国の言いなりになる日本を揶揄して「サイレント・パートナー」などいう文言が使われたこともあった。
 パートナーシップで思い出すことがある。
 主要先進民主主義国6カ国(現在は8カ国)の首脳が一堂に会するサミットの第1回目が1975年仏ランブィエで開かれた。事前に会議の議題や議事進行の段取りを調整する官僚が集まる。
 シェルパと呼ばれる6人の官僚の協議で、宣言文に「パートナーシップ」という文言を入れるかどうかが論議された。席上、フランスのシェルパが異議を唱えた。「フランス語にはこれに当たる言葉はない」と言い出したのだ。
 結局、「パートナーシップ」は宣言文から削除された。日本側シェルパから後日聞いた話だ。
 Partnershipは日本語でもパートナーシップ。マスコミも国民も納得している。だが、その中身について日本人は詰めた論議をしたことはない。
 実は日中間でもこのパートナーシップという言葉が問題になった。中国側が異論を唱えたのだ。結局、パートナーシップを日中両国語では「戦略的互恵関係」という文言に翻訳したという。日本側関係者から聞いた話だ。
 「日本が抜かれた」話をアメリカ人の知人にすると、こんなコメントが返ってきた。
 「Partnerには、今仲良しでもいつか手ごわい敵になる可能性のある相手というニュアンスがある」
 毎年10%台の経済成長を続ける中国。青天井の軍事力拡大を続ける中国。アジアの平和と安定のためにアメリカが中国を最重要なパートナーに選ぶのは当然のこと。抜かれてもいいではないか。【高濱 賛】

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1 Comment

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  1. 私の家内は良きパートナーかと思って40年間付き合ってきましたが いつか手ごわい
    敵となる可能性があるとは? 然し考へて見るに 敵になる頃
    私は死ンジャってるでせふから 安心しました。