日々ニュースと向かい合っていると、耳を疑ってしまうような出来事に多々遭遇する。この1年を振り返ると今年も例外ではなかった。移民問題に銃犯罪、ホームレス問題などあげたらきりがない。だがそんな中でも、ふと心を温かくしてくれるようなニュースが舞い込んでくることがある。
 先日、セ氏マイナス3度の雪が降り積もるカナダの田舎道で、道路脇にうずくまるメスの野良犬が発見された。気づいた人が救いだそうと持ち上げると、お腹の下には5匹の子猫が隠れていた。もしこの野良犬が子猫たちを温めていなかったら、おそらく子猫たちは死んでいたという。野良犬と子猫たちはその後、動物保護施設に無事保護され、野良犬はセレニティ(安らぎ)と名付けられた。
 セレニティがどのような経緯で子猫たちと出会ったのかは分かっていない。しかし、保護された後も子猫たちを我が子のように可愛がっているという。
 今すごいのはソーシャルメディアの力だ。この出来事がフェイスブックを通して紹介されると瞬く間に広がり、カリフォルニアやテキサスなど北米だけでなくドイツやアイルランドからもセレニティを引き取りたいという申し出が殺到したそうだ。世知辛い世の中だが、セレニティは文字通り私たちに安らぎを運んできてくれた。
 動物の種類は違っても子猫を慈しむセレニティに、言葉を発せない子猫たちもきっと心の中で「助けてくれてありがとう」と思っているに違いない。親がいない子猫たちに愛情を与え続けた1匹の野良犬のストーリーは、「与える」ことの大切さと、伝えきれない感謝の気持ちが動物にだってあるということを教えてくれているような気がした。
 サンクスギビングを終え、昨日はギビングチューズデー。この日は慈善団体などへの寄付が呼び掛けられ、まさに「与える」ことに重きがおかれる。一方で、お金ではなくお世話になっている人に日頃の感謝の気持ちを伝える動きもある。
 こんな日はお世話になった人、困っている時に手を差し伸べてくれた人のことを思い出し、普段なかなか「ありがとう」を伝えられず心の中にしまっておいた感謝の気持ちを届けられたらと思った。【吉田純子】

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