増田さんは、会員、非会員を問わず、主にサウスベイ地域で営業する日本人オーナーに「助け合おう」と団結を呼び掛けた。情報交換には、無料アプリ「ライン」でグループを作り、朝からやりとりをしている。
増田さんによると、各オーナーは、従業員の削減を余儀なくされ、心を痛めながら店を必死に守っている。「日本食店と日系コミュニティーを助けて下さい」と協力を呼び掛けている。
増田さん自身は、「神楽」4店と「TOT(定食屋オブ東京)」1店の和食店5店を持つ。規制前は店内飲食だったが、持ち帰りと配達に切り替えた。弁当メニューを充実させ、宅配は代理サービスの「ウーバーイーツ」「ドアダッシュ」「グラブハブ」などを初めて取り入れた。持ち帰りの客に感謝の意を込めて、仕入れた野菜やコメ、パスタなどを原価のわずか1ドルで販売するなど急きょ、「八百屋」の業務も始め「ほそぼぞとでも必ず続ける」と固く誓った。「負けないで」というポスターを作り店内に掲げ、それを見た客から「Nice. Stay Strong.」と励まされ「うるっときた」と、気を取り直したこともあった。
従業員はパートタイムを自宅待機させ、フルタイムはできるだけ仕事を与えようと店を開ける決心をした。「少しでも給料を払いたいけど、その売り上げもないと店を開けていても、どんどん赤字になっていくので難しい」と窮状を訴える。「(今の客入りなら)もうかることはまずないので、できるだけ出費を抑えて何とか従業員の確保を維持することが今一番の課題」と述べた。これまでの愛顧にされた顧客のためにも営業を続ける意志を示した。【永田潤、写真も】
OCの和食店も苦戦
悲鳴上げる日本人従業員
「月曜日には客足も落ちて、いつもなら20〜30ドルもらえるチップが、たった6ドルだった」と話すのはオレンジ郡の、ある日本食店の日本人従業員。「追い打ちをかけて店内飲食禁止令が出て、全員が自宅待機を言い渡された」と困惑の様子を語る。「持ち帰りと配達だけで営業が行けるか、店主とマネージャが2〜3日様子を見ると言っているが、そうなったとしても呼び戻されるのは一部のすしシェフ、キッチンと電話応対の数人のみ。ホールのサーバーは失業手当を申請するしかないが、給付には上限があるので収入は激減する」と憂慮する。
「普段から持ち帰りの注文は多いので、完全休業までにはならないだろうが…」と話していた通り、その後、営業は続けることになったそうだが、出勤日は半分に減ってしまった。店としても、これまで利用していなかった「ドアダッシュ」ほかの有料配達サービスを検討するなど努力するようだが、「早く元に戻ってほしい」と頭を抱える。
カジュアル系の飲食店はまだ持ち帰りと配達にシフトできるが、高級店の場合はもっと深刻で、「営業が止まれば店舗の家賃や従業員の福利厚生費用などの支払いで徐々に首が締まる」と悲鳴を放つ。
午後7時、いつもはにぎやかな小東京の街角がひっそりとしている。「OPEN」のネオンが寂しげに点滅するガラス戸の向こうには、椅子をテーブルの上に上げたガランとした店内が見えるが、その奥のカウンターでは必死に持ち帰りの営業を続ける従業員の姿がある。
ロサンゼルス郡の参事は営業規制の会見の中で、このような状況下でもローカルのスモールビジネスを何とか助けられるように、市民も協力してほしいと話していた。小さなひと言だが、行政もコロナウイルスの感染拡大と必死に戦う中で、犠牲になるビジネスや人々がいることを心に留めている。配達を注文したり、業務再開後の予約を入れたり、ギフト券を購入したり、できることがあれば率先し、いつも利用する日系コミュニティーのスモールビジネスに思いやりを示したい。【長井智子】