感染予防のためのソーシャルディスタンシングを保ち、マスクと手袋を着用したボランティア(左)から夕食を受け取る小東京タワーズの住人
 新型コロナウイルスの感染拡大防止策として出された外出制限が続くロサンゼルスで、低所得の高齢者に夕食を届ける活動をする「小東京イーツ」に、飲食店やビジネスが低価格で食事を提供する取り組みについて、羅府新報がインタビューした。

スパゲティ・ボロネーズを調理する「酒道場」の店主(左)
 ロサンゼルスの小東京コミュニティーは、加州外出禁止令の影響を受ける低所得の高齢者を心配した。飲食店やビジネスが営業停止した後、どうやって食料を入手するのか? 安全と栄養は両立できるのか?
 そこで、「Keiro」とリトル東京サービスセンター(LTSC)が手を組んで、問題解決のために立ち上がった。それが「小東京イーツ」の始まりだ。シニアとその介護者たちの生活の質の向上に尽くす「Keiro」からの助成金を得て、「小東京イーツ」は人気飲食店のキッチンから正規の値段で料理を購入し、地域の低所得高齢者に低価格で届けている。
 LTSCサービスプログラム部部長のマイク・ムラセ氏と、Keiro最高経営責任者のジーン・カナモリ氏に聞いた。
―このパンデミックの小東京への影響はどのようなものか?
 ムラセ 新型コロナウイルスの感染が広まる中、小東京の小規模事業は(他の地域と同じく)打撃を被っている。ソーシャル・ディスタンシングの実施で、飲食店は店内でのサービスが禁止された。一夜にして持ち帰りと配達のみの経営を強いられた。従業員を解雇しても経費を払い続けることが難しくなっている。
 一方で、小東京タワーズ、ミヤコガーデンズ、カーサ平和などの低所得者住宅に住むお年寄りは、外出禁止令で自宅に引きこもることになった。買い物や食事の選択肢は狭まり、強要された孤立と不透明な先行きは恐怖、不安、ストレスを引き起こしている。
 ―そのような状況下で、「小東京イーツ」はどのように発案されたのは?
小東京に住む高齢者に提供されたカレーライスのディナー
 ムラセ 小東京コミュニティーカウンシル(LTCC)、LTSC、Keiroのリーダーたちがどのように小東京コミュニティー支援するべきかを協議した。
 カナモリ 小東京に住む高齢者が危険を冒さずに食料を入手するのが難しくなることは明らかだったので、まず、そこに緊急の支援が必要だと気が付いた。
 ムラセ 小東京の地域生活に不可欠な高齢者と小規模事業者が、共に支援を必要としていた。そこで、地域の飲食店に高齢者のための食事を用意してもらい、両方を同時に助けられないか、と思いついた。この新しいプログラムでは、小東京の飲食店は正規の値段で料理を供給し、高齢者たちは毎食3ドルで受け取る。差額はKeiroの補助金が負担している。LTSCは過去数十年、サービスの精神にあふれたスタッフやボランティアと共に小東京の高齢者コミュニティーの世話をしてきた。
 ―どのような反応や感想を得ていますか?
 ムラセ 小東京イーツが始まってから、多くの人に喜ばれている。住民の一人は遠くから「大変ね…皆さん、ありがとうございます」と声を掛け、ねぎらってくれた。
 飲食店やビジネスの経営者、従業員、LAの各地から小東京に集まったボランティア、LTSCのスタッフ、そして家から出ることのできない人々。コミュニティー全体がこのプロジェクトに関わっている。これが契機となり、皆のボランティア精神、謙虚さと意欲が、人助けのために新しいことを始め、何とかしてこの時期を乗り越えようとしている。小東京イーツを担当するLTSCのソーシャルワーカーの一人は、このように考察した。
ディナーボックスを準備する「ミツル・スシ&グリル」のスタッフ
 ―出資者のKeiroにとって、このプロジェクトの大切さは? Keiroの使命をどのように反映しているか?
 カナモリ まず、われわれは何百人もの高齢者がウイルスに感染したり、コミュニティーの中で感染が広まる事を一番に心配していた。高齢者が食料調達のために外出しなくてはならない状況を何とか回避したかった。そして高齢者に食事を提供するのと同時に地域の飲食店に経済的支援ができれば、双方に利益がある。
 Keiroは南加全体の日系米国人や日本語を喋るコミュニティーのさまざまな組織と手を組んでいるが、小東京が本拠地だ。小東京の中では比較的新参だが、われわれのコミュニティーにおける小東京の歴史的重要性は理解している。このパンデミックを乗り越えるためには団結が必要だ。今こそコミュニティーのニーズに応えて、協力する時だ。
 ―このパンデミックの最中、プロジェクトを運営していて学んだことはあるか?
 ムラセ 小東京はレジリアンス(困難をはね返す弾力性)と思いやりのあるコミュニティーだ。危機にあたり腕を組み合い(今は文字通りにすることはできないが)、団結する。すでに知っていたことだが、再確認できた。
 小東京は過去136年間、加州外国人土地法、住宅差別、移民反対主義や外国人嫌い、世界恐慌、第二次世界大戦と強制収容、そして地域の再開発などの危機を乗り越えてきた。今立ち上がってお互いを助け合わなかったら、小東京はどうなってしまうだろうか。皆が愛するこのコミュニティーを守るという共通のゴールに向かって、一人一人がそれぞれできることをしたがっていると思う。
 ―小東京イーツは外出禁止令の期間中ずっと続くのか?
 カナモリ 外出禁止令が長期化した場合も、小東京イーツのようなプログラムが、コミュニティーの中でも一番リスクの高い人たちを守り、地域の小規模事業の支援を続けられればよいと願う。だが、これには多くの人の支援と協力が必要だ。地域の人々がボランティア活動や寄付による協力の継続を切望する。【クリスタル・デュアン、訳=平田真希子、写真=LITTLE TOKYO EATS 】
120食のサバ定食を用意する「スエヒロカフェ」のスタッフ

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