昨年のコロナ・パンデミック以来ホームレスが急増し、この深刻な問題をどう解決すべきか市議会で議論中だ。ロサンゼルス・ホームレス支援機関の2020年の統計によると、その数全米約57万人、カリフォルニア州15万人、LA郡6・6万人、LA市4・1万人(昨年から16%増加)である。
ベニスビーチではボードウォークの沿道に大規模なエンキャンプメント(テント村)を形成し、廃棄物、放火、ドラッグ、強盗、暴力事件などが生じ、周辺の子供のいる住民たちの安全に懸念が膨らんでいる。
さまざまな専門家たちが長年解決に取り組んできた。2016年、20億ドルのローンで、ホームレスのために新たに住宅施設建設を援助する法案が通った。しかし、未だ大幅に改善されない現状に、今年4月連邦判事が、適切な対策を怠ったと、市と郡を批判した。
最多数ビリオネアを生み出し(やがて中国に抜かれる?)、宇宙にロケットを飛ばし、ワクチンを即座に開発し、軍事力、経済力、政治力で世界ナンバーワンのアメリカが、なぜ解決できないのか? カリフォルニア州は世界で第5位の経済力を誇る。
何十年前に遡るが、レーガン政権時に貧富の差が広がり、米ソ冷戦で国家予算を極力軍事に注ぎ込み、社会福祉費を削った結果、病院にいるべき精神状態の人たちが追い出されたのが、そもそも発端の要因と分析する説も挙げる(*ホームレスの大多数に精神疾患があるとは限らないとの調査もある)。さらにLAのホームレス人口の60%が刑務所に服役した過去があるという。
物価・家賃・生活費の高騰、失業した上に、賃借人の権利が充分保護されず立ち退きを強制され、国にも見放され、アルコール・薬物依存症で家族にも見放され…社会復帰がなかなか困難だ。悲しく、心が痛む。
テント村を撤去しどこか収容するにも本人の同意が必要で、人権問題にも関わってくる。ソーシャルワーカーたちの活動、教会などからの温かいサポート、屋根のある住居の確保、カウンセリング、そして何よりも市民と一緒にこの難解な問題を理解し、人道的なアプローチで団結し、真剣に向かい合う姿勢が重要だ。【長土居政史】磁針

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