大ケガを乗り越え、復帰を果たした濱村洋行さん。総合格闘家、格闘技指導者、スタントマンとしての活動再開へ意欲を示している
 2カ月前、格闘技指導者およびスタントマンとして活躍する濱村洋行さんの情熱は、ほぼ尽きようとしていた。スタント中のケガにより、4回にもおよぶ頭蓋手術を受けた後、動くことも話すことも、まともに歩くこともできない体になっていた。「とても恐ろしかった」と濱村さんは振り返る。一時は再起が危ぶまれたものの、濱村さんは6月初旬に奇跡的な復帰を果たし、格闘技クラスを再開。医師によると、予想をはるかに超える回復力だという。

ブラジリアン柔術を指導する濱村さん(左)
 「ハードなスタントはまだやらないが、俳優のトレーニングをしたり教えたりすることはできる。完全復帰ではないというだけだ」と話す濱村さん。手術後は、認知・作業・理学療法に加え、在宅療法も受けている。頭蓋骨を骨折したのは、格闘シーンで仰向けに倒れた際に、頭を打ってしまったことが原因だという。急きょ手術を受けたが、出血などのため再手術を余儀なくされた。ようやく回復へと向かったが、わずか4週間の間に4回もの手術を受けることは、濱村さんのように健康で体力がある人にとっても非常に苦しい経験だった。
 今のところ、術後の経過は順調で、3年前に設立したジム「ポイント・オブ・インパクト・MMA」の運営にも復帰した。
 格闘技の専門家として、一般向けの格闘技クラス開催ほか、エンターテイメント業界でも指導者として知られる濱村さん。「スタント業も行っているが、レスリングやボクシング、柔術などを教えることができるのが私の強み。ジムでは多様な種目を扱っており人気を博している」と語った。
 現在、35歳の濱村さんは東京生まれ。日本で米国製ゴルフクラブを販売していた父親の仕事の関係で、3歳の時に米国に移住し、カリフォルニア州オレンジ郡で育った。幼い頃から活発でサッカーや空手の経験もあったが、16歳までは総合格闘技(MMA=Mixed Martial Arts)のトレーニングを受けたことがなかったそうだ。その頃からムエタイとブラジリアン柔術を始め、高校を卒業後、カリフォルニア州立大フラトン校に進学。その後、格闘技のトレーニングと大会スケジュール調整のためにレッドランズ大学に転校した。
女子生徒にも厳しく指導する濱村さん
 総合格闘技のキャリアに火を点けるきっかけとなったのは、皮肉にもサッカーでのケガだった。「前十字靭帯(じんたい)を損傷し1年間も運動禁止になった。鬱屈(うっくつ)した日々を送っていたが、格闘技によって自分を取り戻すことができた。格闘技は自らコーチとなり、日々まい進しなければならないスポーツで、多くの学びを得た」と語る濱村さん。最初はアマチュアとして、その後プロとして試合をしながら、濱村さんは自分が成長するのを実感していく。大学在籍中は、格闘技を教えたりバーテンダーをしたりしながら過ごし、大学の卒業論文では、マーシャル・アーツ・スクール開業をテーマに選んだそうだ。
 大学を卒業し結婚したが、格闘技の仕事はあまり良い収入にはならなかったため、出資者を見つけることを決意。卒業してから2年ほどで賃貸物件を見つけ、2018年にジムをオープンした。ビジネスパートナーは、映画やテレビのスタントコーディネーターをしていた長年の知り合いだった。その後7年のトレーニングを経て、念願のエンターテイメント業界に進出した濱村さん。「多くの格闘技家が映画のパフォーマーになりたいと考えている。私にもその意思があることを、ビジネスパートナーに示したかった」と語っている。
 濱村さんが初めて出演した映画は「バーズ・オブ・プレイ(Birds of Prey)」で、主演女優のマーゴット・ロビーと共に格闘するシーンだった。その後、テレビ番組「私立探偵マグナム(Magnum P.I.)」、ネットフリックス配給の「スイート・ガール(Sweet Girl)」、「デューン 砂の惑星(Dune)」、そしてライアン・ゴズリング主演の「ザ・グレイマン(The Gray Man)」など、多くのプロジェクトに参加している。格闘シーンやスタントに加えて、俳優のトレーニングも手掛け、これまでジェイソン・モモアやライアン・ゴズリングに、映画で必要な格闘シーンや動きなどを指導している。
 格闘技の指導者として、またパフォーマーとしても成功している濱村さんの基盤は、自身が経営するジム「ポイント・オブ・インパクト・MMA」にあるという。現在、11人のスタッフが在籍しており、濱村さんが長期映画プロジェクトなどで不在中も、ジムの運営を任せることができるそうだ。
生徒と組んで指導することも多い
 「成功は一夜にしてならず。開設から1年半は、早朝5時から夜の10時まで働いた。開設以降、多忙だったが、今は信頼のおけるスタッフにも恵まれ感謝している」
 オレンジ市にあるジムには、成人・子ども向けの「ムエタイ」や「ブラジリアン柔術」をはじめ、「カーディオ・キックボクシング」、映画のスクリーン上での戦い方を教える「シネマ格闘トレーニングコース」があるほか、自閉症の子どもたちを対象にした「チャンピオンズクラブ」など、多彩なクラスを設けている。昨年は、新型コロナウイルス感染拡大により、数カ月にわたる休業を強いられたものの、期間中はジムの会員たちに、HIIT(高強度インターバルトレーニング)を提供するオンラインクラス「POI LIVE」を配信。現在、州の規制解除により営業が可能になったが、徹底した安全対策を行っている。
 7月にはジム設立3周年を記念し、無料クラスなどさまざまな特典を用意。「カーディオ・キックボクシング」「POIMMAアンリミテッド」「キッズ・チーム・インパクト」の6カ月および12カ月のプログラムに申し込むと、1〜3カ月分の料金が無料になる。詳細はウェブサイト—
  www.poimma.com/
 または電話714・681・1760。
 ジムの住所—
 542 W Katella Ave, Orange, CA 92867

Leave a comment

メールアドレスが公開されることはありません。