ロサンゼルス日本映画祭では代表を務める池田直之さん

 「映画を完成させ、たくさんの人に見てもらう。そう思いながらこの作品に関わってきました」と語るのは、俳優の池田直之さん。4日から始まったロサンゼルス日本映画祭(JFFLA)で、自身の初主演映画「String」(岩永祐一監督)が公開されている。この作品でプロデューサーも務めた池田さんは「人との関わりを感じてもらいたい」とSNSなどを使いプロモーションに力を入れている。

教師から転身し、ハリウッドで俳優のキャリアを積み上げている池田直之さん

 俳優活動をする以前の池田さんは、出身の愛知と鹿児島の両県で中学・高校の英語教師をしていた。教師生活13年目のある日、突然体調を崩しそのまま1年半の休職。その間、自分の人生を見つめ直した池田さんは、以前から興味のあった俳優の道に挑むことを決断する。その舞台は日本国内ではなくハリウッド。俳優になるべく2009年に渡米を果たした。
 当地で俳優を目指す人々は通常、有名な演技指導者のクラスを回りながら技術を身に付けていく。ところが渡米したころに池田さんが受けたのはワークショップ1カ所のみ。以来、演技においてはほぼ自己流を貫いてきた。持ち前の強力な存在感と努力して培った人脈も手伝って、12年間で46作品に出演。プロデューサーとしても5作に携わるというハイペースでキャリアを積み上げている。「アメリカン引きこもり」(2015年)は、ワシントンDCとNYで行われた映画祭に入選。「アナザー・イエスタデイ」(19年)では、助演男優賞を受賞するなど演技も認められた。
 今回主演した「String」は、「都会に暮らすホームレスが実は才能あふれる津軽三味線奏者だった」という日本で実際にあった話を基に舞台をLAに置き換えたもの。「津軽三味線を弾く場面では代役を立てず、池田さんが実際に演奏した(音はプロの三味線奏者の演奏を使用)。教師時代に和太鼓クラブを作り邦楽に親しんできたことから、三味線の稽古にもスッと入ることができ楽しめたと言う。

自身の初主演映画「String」で好演する池田直之さん(右)

 役作りについての質問には、近所でホームレスの人たちと毎日のようにすれ違うことから、遠い存在ではないと答える。「小銭を求められたら1ドル渡します。金銭を渡すのには賛否両論あるし、いろいろな理由からそれをしない人も多いと思う。僕も以前は無視したり断ったりしていたし、相手のお金の受け取り方や態度に腹立つこともありました」。相手がどうとかではなく、自分の行動が自分にとって理想的かどうかという点の方が大切だと気付いてからは「行動が変わった」と言う。ホームレスが「ご飯を買って」と頼んできたら一緒に行って食べ物を買う。その男性が今日食べる唯一の食事になるかもしれないから。池田さんはそんな日常を芝居に再現し、日本人ホームレスが実際にダウンタウンの高架下にいるようなリアルさを作り出した。
 「家族、子ども、友情、人との関わりが描かれていることを観る人に少しでも感じてほしい。誰かに愛されていることや周囲に支えられていること、そういう部分が作品から伝われば良いと思う」
 JFFLAは、オンラインと劇場(9、10日)の両方で上映されるハイブリッド形式。4日から10日までオンラインで、9、10日はハリウッドのマリリン・モンロー・シアター(7936 Santa Monica Blvd.)で開かれる。詳しくはウェブサイト—
 http://jffla.org/ 
【麻生美重】

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