大日本農会の緑白綬有功章の伝達式。左から岩下さん、武藤総領事、松野さんの代理の新井さんとオンラインで参加した松野さん夫妻(画面内)

 令和3年度の農事功績者として公益社団法人「大日本農会」から有功章を受章した2人に対する伝達式が14日、ロサンゼルスの総領事公邸で行われた。受章したのは庭園業・造園業の岩下寿盛さんと、バラ切り花栽培業の松野淑人さん。明るい春の日差しの下、公邸の日本庭園で武藤顕総領事がそれぞれに緑白綬有功章を授与した。北カリフォルニア在住の松野さんはオンラインで出席し、代理として映像作家の新井淳蔵さんが表彰状と紀章を受け取った。新井さんは2019年に、戦後移民の父と呼ばれた内田善一郎さんとサリナスに入植した移民家族を描いたドキュメンタリーを制作し、松野さんを取材した。

緑白綬有功章を受章し家族から祝福を受ける岩下さん(前列左端)

 南加庭園業連盟会長の岩下さんは会長職を18年から務め、地域の庭園業の発展に貢献している。1968年から庭園業・造園業に、78年から日本庭園業に従事した岩下さんは多忙な仕事の傍ら、日系人社会の活動や日米親善に精力的に尽力してきた。2012〜13年には南加県人会協議会の会長を務めている。日系社会の伝統であり心のよりどころでもある日本庭園の手入れをボランティアで協力するなどし、貴重な活動でコミュニティーに貢献している。
 感激した様子であいさつに立った岩下さんは「南加大日本農会の小山信吉会長と三宅明巳大先輩の強い後押しでいただいた章。この受章に恥じないようにこれからも一生懸命努めなさいという意味の奨励賞と考え、受章させていただく」と謙虚に述べた。また、「武藤総領事の着任頭初からの要望でもあった日本庭園保存会を、庭園業連盟で立ち上げることができた。日系社会だけでなく南カリフォルニアにおいて縦横のつながりを密にして、日本庭園保存会を土台にして伝統ある日本庭園の保存に努めながら、後継者の育成につなげていきたいと願っている」と展望を話し、理解と協力を求めた。

代理で出席した新井さん(左)とオンラインでつなぎ受章を祝う松野夫妻(画面内)

 一方、松野さんは1973年に花き栽培の盛んなサリナスにカーネーション栽培のグリーンバレー・フローラル社を設立。南米の値段の安い花きに押されるようになると家族で力を合わせてバラの栽培に取り組み、全米の品評会で数多くの賞を受賞するなど花き栽培農家として揺るぎない地位を築いた。2020年のグリーンハウス・マガジンで全米栽培業者のトップ100に選ばれている。

 オンラインでつながった北カリフォルニアから画面を通じて言葉を発した松野さんは「皆に助けられ、たまたま私たちは実績を上げることをできたが、多くの先輩後輩が努力をしていることを私たちは知っている。これも全て、鹿児島からの渡米のきっかけとなった内田善一郎さんの移民運動にかけた熱意と努力のおかげ。今回の受章は鹿児島県人、移住者全員が受けたものだと思っている。現在、経営を引き継いだ娘夫婦の良き相談役としてこれからも努めていきたい」とあいさつを述べた。

あいさつに立つ南加大日本農会の小山信吉会長

 祝辞に立った南加大日本農会の小山信吉会長は、松野さんについて、「4年前に新井さんが制作したドキュメンタリー映像『ドリーム・ブラッサム(邦題 夢は咲く)』を見て松野さんの素晴らしい生きざまに感激した」と話し、「苦労の多い中で家族と力を合わせ花き栽培農家としての地位を固めて成功した松野さんをいつか表彰したいと思っていたが、このたび、機会を得て大変にうれしい」と祝福した。
 また、南加庭園業連盟のアドバイザーも務める小山さんは、岩下さんについて、「ここにいる方々は皆、岩下さんをよくご存じの方ばかりだが」と前置きしながら、「35年もの長い間、自ら進んで日系社会に奉仕し、『会員の高齢化の問題に直面する庭園業連盟の役に立つなら』と、今も5年目の会長職を引き受けてくれている」と紹介し、「会員、役員一同が心から感謝している。私利私欲のない岩下さんの、心のこもった奉仕の姿は日系社会の鏡だと思っている」とたたえた。
 他にも、南加県人会協議会会長のリチャード渡辺さん、同会アドバイザーのタック西さんが祝辞を贈り、南加系商工会議所の竹花晴夫会頭の音頭で乾杯が行われた。
 乾杯後、岩下さんは羅府新報へのコメントで、「うれしさや喜びよりも、身に余る受章に恐縮している。何よりも忙しく飛び回る自分のわがままを支援してくれた妻と家族に感謝したい。章に恥じないように自分のできることをやっていきたい。今後も、特に日本庭園の継承に力を注ぎたい。今は、本当に継承者がいない。日本庭園を守る会を庭園連盟で立ち上げて、第1歩を踏み出したところなので、これから力を注ぎたい」

岩下さんと松野さんの受章を祝い乾杯する参加者

 日本庭園の意義について武藤領事は羅府新報に、「日系社会と日本庭園は一体となってコミュニティーを築いてきた。日本庭園は日系人の心のよすがだと思う。いい状態で保存されることが大切。荒んだ日本庭園を見たら、日本人なら心を痛める。だが、いい状態は職人でないと分からない。それができるように若い人を育てたいと、岩下会長に相談したことがある」と明かし、「この公邸の日本庭園も岩下さんらの手で美しく整えられている」と話す武藤領事は、「庭園連盟の下に保存の会ができたことはうれしく、領事館としてもできる限り支援していきたい」と熱く思いを伝えた。
 公益社団法人大日本農会は、明治14年に日本の農業の発展と農村の振興を目的として創設された団体で、現在は7代目総裁として秋篠宮文仁後嗣殿下が就任している。明治27年より農事功績が顕著な者などに対し、紫白綬有功章、紅白綬有功章および緑白綬有功章の3種類の有功章が授与されている。北米では、カリフォルニア州に農業移住した人々との親善を図るため、昭和5年に大日本農会北米支会が設立され、昭和35年に同支会が南加支会と北加支会に分かれた。日本国内では各都道府県知事および本会支会の推薦、海外では南加支会長および北加支会長の推薦に基づき、多年にわたって農業の発展や日米親善等に貢献された人が受章する。21年の受章農事功労者は国内62人、海外2人となっている。(長井智子、写真も)

岩下さんと松野さんの緑白綬有功章の受章を祝った伝達式の参加者

Leave a comment

メールアドレスが公開されることはありません。