カリフォルニア2カ所でのライブのために来米したJポップのアイコン、きゃりーぱみゅぱみゅさんが19日、小東京の商店街を訪れ、4店舗を回り店主を激励した。小東京の活性化のために開発した、自身の代名詞「かわいい」を盛り込んだコラボ商品を紹介。総領事公邸では、次代を担う日系4世と意見を交換し、日系社会との交流を深めた。

ピンクのワンピースで決め、初めて訪れた小東京を厚底シューズをはいて歩くきゃりーさん

 きゃりーさんは今年、デビュー10周年の全国ツアーとの連動企画「LOCAL POWER JAPAN Project」を行なっている。これは新型コロナウイルスのパンデミックで大きな打撃を受けた地域経済の活性化を目的にツアーで赴いた各地でコラボ商品を期間限定で販売し、地元コミュニティーに貢献している。 小東京とのコラボレーションは、米国最大級の音楽フェスティバル「コーチェラ」への出演と、4年ぶりの米国ソロライブ(18日、フォンダ・シアター)を機に実現。海を渡った町おこしは、きゃりーさんの「みなさんが少しでも笑顔になり、地域が少しでも盛り上がる機会になれば」との思いが込められており、売り上げの一部は日系コミュニティーに還元される。

 コロナ禍を経て活動再開へ意気込む日系社会と日系企業を日本のポップカルチャーを通じて支援するこの取り組みは、全米でマスク着用の義務が解除される時期を見計らったかのような絶好のタイミングでスタートを切り、キャンペーンには弾みが付いた。

コラボの4商品。右上から時計回りに「カフェドルチェ」のドーナツ、「おかやま工房ベイカリー&カフェ」のクマをモチーフにしたクリームパン、「風月堂」のいちごとブルベリーのぎゅうひ餅、「文化堂」のTシャツ

 コラボの4商品は「おかやま工房ベーカリー&カフェ」のクマをモチーフにしたクリームパン、和菓子店「風月堂」のいちごとブルーベリーのぎゅうひ餅、みやげ物店「文化堂」のTシャツ、「カフェドルチェ」のドーナツ。どの商品もきゃりーさん好みのピンクや明るい色を使い、大きなリボン、ハート、つけまつげなど、きゃりーさんのステージ衣装を引き立てている「かわいいもの」ばかりだ。Tシャツは、小東京のランドマークである櫓(やぐら)の屋根に、きゃりーさんが好きなサメが乗り、KPPLA(きゃりーぱみゅぱみゅ・ロサンゼルス)の文字とデビュー10周年のロゴがプリントされている。

 ピンクのワンピースに厚底シューズで決め、現れたきゃりーさん。行列のできるラーメン店やおいさしさが評判のうどん店、日本語の看板などを目にし、「日本よりも日本らしい。街には思ったよりも人がたくさんいて活気がある」と、初めて歩く小東京を満喫した。行く先々で熱烈な歓迎を受け、「いろんな店を回って熱い話を聞き、みんながリトル東京を盛り上げたい強い気持ちが伝わってきた」と、キャンペーンに手応えを感じた。  各店では店の歴史や、棚に並んだ商品の説明を受けた。米国人の好みに合わせたピーナッツバターを用いた和菓子など、当地ならではの文化の融合を知り「LAのオリジナリティーが加わっておもしろいと思った」と述べた。袋いっぱいに詰まったおみやげを持たされたことを、「『これ持って行きなさい』と言われ、おもてなしの精神を感じた。リトル東京には日本の商店街を思わせる温かい心がある。古き良き日本の伝統文化と、LAならではのアイデンティティーが重なっていてすごく楽しめた」と笑顔で話した。

おかやま工房のクマをモチーフにしたクリームパンを披露するきゃりーさん

 約1時間の小東京ツアーを終えたきゃりーさんは、地元テレビ局のKTLAや日本向けのテレビニュースのインタビューに応じた。当地でコラボを企画した理由を、新型コロナウイルスの打撃により客足が減ったことを聞いて心を痛めたとし、「同じ日本人として、何とかして力になりたいと思い、プロジェクトを思い立った。でも、実現できるとは思っていなかったので、信じられないくらいすごくうれしい」と説明した。

 ライブの感想を聞かれ、米ツアーは4年ぶりで「ブランクがあったので正直、『みんな会いに来てくれるのかな』と不安だった」と明かした。また、デビューからこれまでの10年間では感じなかったプレッシャーがあったと言う。だが「いざステージに立つと、本当に楽しく夢の中にいるようないい時間を過ごせた」。「コーチェラの観客は、これまでに私のライブを見たことのある人がほとんどだったと思うので、楽曲で盛り上がった印象だった。ソロライブは、みんなが一緒に口ずさんでくれたり、楽曲を聴き込んでくれて、うれしかった」と、ライブの成功を喜んだ。今後は新型コロナの影響で延期されていたワールドツアーに意欲を示し「そのツアーで来年またLAに戻ってこれたらうれしい」と目を輝かせた。「海外のお客さんは自分を乗せてくれるので、いいパフォーマンスができる。帰国して日本でライブした時に『すごくいいライブだった』と誉められることが多くて、それは海外のみなさんのエネルギーのおかげなので、感謝している」

 「JポップがKポップを追い抜いて立場が逆転することはあると思うか」との質問に対し「私のことを知って楽曲を聴いて、そこからもっとJポップに興味を持ってもらって、もっと日本の音楽が世界に広まればうれしい」と述べたが、「ただ、私のやっている音楽は相当に特殊で、Jポップにはこういう私のような人は珍しい」と語り、笑わせた。

 きゃりーさんは、今ではローマ字になった「Kawaii」や「Harajyuku」を世界に発信し、Jポップカルチャーのアイコンとして若者から支持を受け、数々の世界ツアーをこなしてきた。ケイティ・ペリー、レディー・ガガ、アリアナ・グランデなどの超一流アーティストをも魅了した。

コラボTシャツを販売する文化堂の店主アイリーン・シモニアンさん(右)から小東京の歴史を聞くきゃりーさん

 「『かわいい=きゃりーぱみゅぱみゅ』になって、一時期は『どうしよう』と思ったこともあった。でも自分が発信したのは『かわいい』だけではない」と強調。「その時々の感性で表現したいことをナチュラルに発信してきた」と語った。「自分がやってきたことが評価され、それぞれの感性でそのように『かわいい』と思ってくれる方がたくさんいるのは、とてもうれしい」と素直に喜んだ。小東京については「お店もすごくかわいくて、コラボ商品もすごくかわいいので、そういうアイテムを手にとってくれればうれしい」と話し、来店を呼び掛けた。

 デビュー当時から現在までの成長を振り返り、「ここまで10年活動ができているが、応援してくれる方がいるので続けられる。昨日(18日)のワンマンライブではたくさんの現地の人が駆けつけてくれて、それを実感した。応援してくれる人に感謝したい」と、サポーターの存在を強調した。10年間、変わらず独自の発想で自己表現し、根強い人気を誇る。YouTube、インスタグラム、ツイッター、TikTokなどソーシャルメディアを駆使して、アーティスト、クリエーター、インフルエンサーとして存在感を示し続けている。

全米日系人博物館の館長アン・バロウズ氏(右)から日系史を学ぶきゃりーさん

 きゃりーさんは全米日系人博物館にも足を運び日系史を学んだ。第2次大戦時に強制収容された日系人の暗い過去に驚き「えー、そんなひどいことが。あってはならない」と真剣な表情で語り、バラック小屋の復元に見入っていた。日本からの写真花嫁の展示では笑顔を取り戻して、洋服で着飾った当時の日本人女性の古い写真をじっくりとながめていた。博物館のミッションや収蔵品に感銘を受けたといい「皆さんの歴史を学んだことは意義深かった」と、謝意を表した。

 今回の小東京商店街とのコラボの実現は日本総領事館が取り持った。きゃりーさんは小東京の訪問を終えた同日の夕方には総領事公邸に招かれ、ハリウッドの映画・音楽関係者らが見守る中、日系米国人の次世代を担う「L.A. Next Generation Japanese American-Yonsei Leaders Initiative」の若者2人とのパネルディスカッションに臨んだ。「日米のポップカルチャー」「地域活性化」「新型コロナウイルスがもたらした影響」というテーマの中で、展開するコラボ企画の発想や小東京への思いを率直に語った。また、「日系人は、日本の文化とポップカルチャーをどのように思っているのか」と質問するなどし、心を通わせた。

次世代の日系4世と意見を交わしたパネルディスカッション。左から中川悠介氏ときゃりーさん

 パネルには、きゃりーさんの所属事務所「アソビシステム」社長の中川悠介氏も参加した。同事務所はきゃりーさんをはじめ、DJや音楽制作者、モデル、俳優、イラストレーターなど約100人のアーティストを抱えているが、パンデミックによってネット環境が発達したことで「言葉や活動場所など、さまざまな障壁を越える可能性を感じている。これまでは、日本国内のみで閉鎖的だったと正直に思うが、その時代は終わった」と言い切り、世界にマーケットを広げる意思を示した。

 アジア系アーティストとして突出しているのが、グラミー賞でノミネートされ受賞する勢いを見せている韓国の音楽グループBTSだ。JポップがKポップに大きく水を開けられているが、中川氏はBTSの成功が自社の今後の展開の模範になることを認めた。

 中川氏は、きゃりーさんが初めて当地でライブを行った10年前と今回を比較し、「日系人とアジア系のパワーを感じている。多くの仲間が増え、さらにこれから発展できる可能性をここに感じている」と語り、米国の市場に希望を見出してる。「いい音楽、いいクリエーター、いい作品を作って、ここアメリカで根付くようにしたい。エンターテインメントの中心地であるロサンゼルスで、日本のエンターテインメントを売り込んでいきたい」と、米国市場での飛躍を期し、世界戦略につなげる。

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