ホイットニー高校茶道部で始まった稽古。着物姿で生徒に指導する岡添教授(中央)と河井教授(左)
扇子を前に置いて、両手をつき、釜を拝見する作法を指導する河井教授

 ロサンゼルス南部セリトスにあるホイットニー高校にこのほど、茶道部が誕生した。初日には、選択科目として日本語を学ぶ生徒のうち21人が、日本語教室内に設置した8畳の畳の上で初稽古に臨んだ。表千家同門会米国南加支部の岡添宗幸教授と河井宗沙教授の指導により、今後もこれから月1回の本格的な稽古を続ける。
 岡添教授は開口一番、「英語ではTEA CEREMONYと呼ばれる茶道ですが、決して堅苦しい儀式ではないんですよ。ホームパーティーでお客さまをもてなすのと同じ」と話し、「今日は皆さんにお客さまになっていただくので、どうか楽しんで」と、生徒たちの緊張をほぐした。お茶席のためにお茶の種類、点て方、軸・花・道具を選ぶことと、パーティーのホストが季節の花を飾ったり、テーブルセッティングを整えたり、ゲストのj好みに応じて食事のメニューを考えたりすることについて語った。「そこには共通性がある」。岡添教授の説明に、生徒たちは耳を傾けた。

お茶を飲む生徒。岡添教授は「直前にいただくお菓子の甘い味が抹茶の苦味を隠す」と説明した

 稽古の内容は靴を脱いで畳の上に上がることから始まり、席に着くまでの歩き方、掛け軸や花の愛で方、お菓子やお茶のいただき方など。最初は戸惑った様子だった生徒たちも、和菓子を口にし、お茶をのどに通すと「おいしい!」と目を輝かせた。「お先です」「どうぞ」「頂戴いたします」といった日本語のあいさつも、生徒たちはこれまで日本語を学んできているだけあり、習うとすぐに、動じることなく口から発していた。
 全校生徒数約千人(7〜12年生)の同校では、現在、4段階の学習過程を通じて約120人が日本語を選択している。生徒が日本語に興味を持つきっかけは、何と言ってもアニメなど現代の日本文化だそうだ。

稽古の進行を見守るホイットニー高校のジョン・ブリクレー校長(左)、ABC統一学校区のメリー・スー教育長(右)と、2人に説明を行うスズキ先生(中央)

 日本語教諭のキンバリー・スズキ先生は「茶道部を通して生徒が日本の文化に少しでも触れられることをとてもうれしく思う。漫画やアニメ以外の歴史ある豊かな文化を経験できることはとてもいいことで、この経験をきっかけにもっと深く日本語とその文化に興味を持ってくれたら最高ですね」と期待を寄せる。
 初めての茶の湯が生徒たちに残した印象はさまざまだったようだ。多くの生徒が「長い時間正座を続けることは大変だったが、抹茶とお菓子がおいしかった」「畳の上を特定の歩数で歩くなど多くの詳細があり、難しかったが興味深かった」との感想を持ったのに加えて、教授がこの日のために選んだ掛け軸「平常心是道」に引かれた生徒もいた。マディソン・プロトキンさんは「私たち生徒にとって、漢字の言葉に込められた知恵はとても大事なものだった」、メリンダ・ウーさんは「軸の説明から自分の経験に関連付けることができた」、ケイラ・ハマカワさんは「花と書道を見て楽しむことが一番印象に残った」と、新鮮な体験を学習中の日本語にしてつづった。

河井宗沙教授(左)から掛け軸の説明を受ける生徒

 その他に、「個人的には日本人のおもてなしが一番面白かった」(デビッド・パークさん)、「正確に歩くのが面白かった」(スラ・パークさん)、「左右の人に違うあいさつをするなど、いろいろなあいさつを習ったことが面白かった」(イザベラ・レイエスさん)、「茶道は静かで穏やかだった。びっくりしたことは、茶道の先生が『茶道の着物のたもとはごみ箱だ』と言ったこと」(アパーバ・ラビシャンカーさん)、「和服はとてもきれいで見るのが楽しかった。私はその優雅な過程に驚いた」(アリス・ソングさん)などと、それぞれの印象をコメントした。ソフィア・オポートさんは「私は茶道で感じた安心感が好き。茶道の中では雑念が入らないので、リラックスできる」という感想を寄せた、
 河井教授は「1回で終わるお茶会体験ではなく、茶道部として1年を通じたお稽古ができることの意義はとても高い」と、茶道部発足の重要性を強調する。「触れる」から「身に付ける」へ、もてなされる側からもてなす側へ。これからの茶道部の稽古を通じて、生徒たちは日本の伝統的な茶の湯の精神を身に付けていくだろう。

甘いお菓子を味わう男女の生徒

 茶道部の実現には日本文化の理解振興と日本語学習の普及に注力する日本領事館および日本語と日本文化の指導・教育のためのプログラムである「Japan Enrichment Grant (JEG)」を提供する南カリフォルニア日系企業協会(JBA)の影の力があった。JEGは道具を始めとする諸経費を助成したが、中でも特別に用意された15個の茶碗は、ロサンゼルス在住の日本人陶芸家マス・オジマ氏(オジマ・セラミックス)によるもの。当地の美術館にも収集されるほどのすばらしい茶器を用いた稽古が始まったことを、実現に動いた関係者らは共に喜んだ。(長井智子、写真も)

陶芸家オジマ氏作の茶碗を取りに出る生徒
茶道部の初稽古を終えた生徒たちと関係者ら。前列右端がスズキ先生

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