オープニング恒例の春・歌まつり音頭

 2019年を最後に中断していた歌謡チャリティーショー「春・歌まつり」がこのほど、トーレンスのジェームズ・アームストロング劇場で公演を開催した。3年半ぶりに晴れの舞台に上がった27人の出演者が熱唱し、約380人の観衆を魅了し大きな拍手を浴びた。

『春は桜の夢が咲く」を歌う佐藤芳江さん

 ショーの主催者の荒木淳一さんによると、コロナ禍が始まった2020年のショーは開催のわずか1カ月前に中止が決まり、練習を重ねていた歌い手は突然に目標を失って落胆したという。「中止が決まったあの日からみんなが、再び舞台に立つ時を待ちわびていた。再開に3年半かかったが、あきらめないで頑張ってくれた」と、たたえた。

 公演はこれまで名称の通り「春」のイベントとして定着しており、今年も当初は3月下旬の開催を希望していた。だが、劇場を所有するトーレンス市からの使用許可が下りず、感染予防のため来場者にマスク着用を求めることを条件として公演開催が決定したのは5月だった。うれしさの半面、本番までの限られた期間で、間に合わせなければならないプレッシャーで不安に駆られたという。

「海峡冬つばめ」を歌う長尾美智子さん

 各人は普段から所属するカラオケ同好会で歌ったり、カラオケバーに行くなどして歌い慣れてはいるものの、ブランクは大きかったという。大勢の客の前で歌う舞台の感覚を取り戻すために、開催1カ月前からパサデナ日本文化会館の体育館を借り、個別2回、全体2回とリハーサルを重ねた。「以前よりも熱を入れて、入念に練習した。みんなが張り切っていた」と荒木さん。
 そして、ついに迎えた当日の朝は開演5時間前に集合し、出演者と歌仲間のボランティアが総出で舞台を飾りつけた。背景幕にはおなじみの「春・歌まつり」のネオンと、2羽の丹頂鶴のシルエットが浮かぶ直径約12フィートの満月を飾り、舞台を整えた。
 オープニングは恒例の「春・歌まつり音頭」で、荒木さん、織田恭博さん、比良ジョンさんの歌に合わせて出演者がうちわを手に踊り活気を付けた。プログラムは1部と2部に分かれ、歌い手は曲に合わせて選んだ着物やドレス、スーツで着飾って舞台に上がった。曲目は演歌が中心で、歌手は日頃練習したのどを披露し、会場を沸かせた。

ディエットで「千の風になって」を歌う、よなみのりこさん(左)と花井のぶきさん

 舞台上には荒木さんの息子で3年ほど前に亡くなったチャッドさんを追悼する遺影が飾られた。生前のチャッドさんは抜群の歌唱力で毎年のショーを盛り上げ、また得意のコンピューターに関する知識を駆使して音響面を引き受け、舞台裏を支えてきた。今回が、亡くなってから初めての公演だった。

 花井のぶきさんとよなみのりこさんは、デュエットで「千の風になって」を歌い、チャッドさんを追悼。歌詞にある「泣かないでください」は、天国のチャッドさんに語りかけるようでもあり、チャドさんから歌仲間たちへのメッセージのようでもあり、来場者の共感を呼んだ。

故チャッドさんにささぐフラメンコダンス。ミカエラ・カイ(右)とヨランダ・アローヨ

 特別ゲストとして出演したフラメンコダンサーのミカエラ・カイさんも「愛、甘き死/僕のギター」の1曲をチャッドさんへささげ、全身をしなやかに使ってチャッドさんへの思いを表現した。
 ミカエラ・カイさんは熊本県人会に所属し、これまでも日系社会の各種イベントで踊っている。今回はスペインから訪米中のヨランダ・アローヨ師匠と共演。チャッドさんへの追悼を含め華やかに2曲を踊った。

 幕間にはパサデナ日系高齢者会への寄付金贈呈式を開き、荒木さんからブライアン・タケダ会長に2千ドルが手渡された。また、今回で10回目の出場となった野宮志津江さんを表彰し、記念の盾が贈られた。

荒木さん(左)から10回出場記念の盾を贈られる野宮志津江さん(中央)。右は拍手を送るパサデナ日系高齢者会会長のブライアン・タケダさん

 ロサンゼルスを拠点に活動するKODAMA太鼓の力強い演奏に続いて開幕した2部にはベテランの実力派歌手が登場した。それぞれが得意とする持ち歌の熱唱に次ぐ熱唱に観衆は酔いしれた。
 トリを務めたのは荒木さん。北島三郎の「まつり」を熱唱した。NHK紅白歌合戦で見られた北島の大トリをほうふつとさせる演出に、手拍子の響く客席が一体となり、ショーは最高潮に達した。フィナーレは東日本大震災の被災地への応援歌として作られた「花は咲く」を、参加者全員の合唱で歌い、心を通わせた。

息子のチャッドさんの遺影(右)を飾り、トリで「まつり」を熱唱する荒木淳一さん

 荒木さんは、ショーを振り返り「みんな久しぶりに大きな舞台に立ち、緊張したと思う。でも上手に歌って、お客さんを喜ばせてくれた。長いブランクを乗り越えて頑張ってくれて、ありがたく思う」と出演者をたたえた。
 ショーは今年で29回を数え、30回記念となる次は、来年3月12日に同じアームストロング劇場での開催を予定している。「一休みしてから記念公演の企画を練る」と話す荒木さん。「あと5カ月で次のショーが待っている。30回の節目なので、ますます気合を入れて頑張りたい」と抱負を述べた。
 次公演の詳細についての問い合わせは荒木さんまで、電話626・512・3767。

フィナーレ「花は咲く」の大合唱。会場が一体となりショーを締めくくった
歌い終え友人から花束を贈られる荒木さん(左)と東りえこさん

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