暑い夏が終わり、空気が澄んで夜になるとひんやりする10月の末、米国ではハロウィーンが行われる。LA在住時、近くの小学校で先生や子どもたちも衣装を着て、ハロウィーンの行事をやっていたことを思い出す。街角にはカボチャを山積みにした小屋が建ち、親たちも子どもにせがまれてカボチャ見物。それぞれにお気に入りを買い求めて持ち帰り、ナイフでランタンを作る。子どもたちは当日の仮装に期待を膨らませ、お菓子をもらう家々を思い浮かべてワクワクしている。
 当時、子どものいないわが家でも独身者を招待し、たくさんのお菓子を用意して待ち受けた。もちろん玄関の外にはジャック・オー・ランタンをともして。暗くなるとボツボツ子どもたちの出番で、幼い子どもは親に連れられて、高学年は友達同士が連れ立って、それぞれ工夫した仮装に身を包み、大きな袋を持って来る。「トリック・オア・トリート」が決まり文句。毎年のことなので妻は何人来たかの記録係。毎年40~50人、迎える方も楽しい夜だった。
 そんなハロウィーンを目前にした今年の10月29日の夜、韓国ソウルの繁華街・梨泰院(イテウォン)にハロウィーンを楽しみに集まった若者たちに悲劇が起きた。幅3メートルほどの狭い通りに13万人。進むも下がるもできない密集となって突然「群衆雪崩」が起き、死者154人、負傷者149人の大惨事が発生。留学中の日本人女性2人がこの事故で死亡した。自治体や民間団体が主催なら安全管理計画を事前に届け出る必要があるそうだが、今回は主催者がいないため、安全面でのチェックが入らなかったという。この事故を受けて、毎年ハロウィーンには大勢の若者でいっぱいになる渋谷のスクランブル交差点付近では、警戒態勢が取られた。
 スマホが行き渡り、SNSなどにアピールする写真を撮るために過激な仮装をしたり、馬鹿騒ぎをしたりする若者が増え、渋谷界隈では毎年問題となっている。日本では1990年代後半から商業に利用する動きが出て、若者たちに広まった。家族で楽しむ風習の定着しない日本では、IT時代で世代間の交流のないイベントになっている点を残念に感じる。(若尾龍彦)

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