ショーン(左)とビック(右)、日本人留学生ミキ(中央)は、あるビデオを一緒に見たことで不思議な力を手に入れる © Shout! Studios

 「すごい映画に出会ってしまった…」。本作を見た時にそう思った。「ゴジラ」や「ガメラ」「ウルトラマン」「仮面ライダー」などの特撮映画と「風の谷のナウシカ」を代表とする昭和の日本アニメで育った筆者にとって、この映画は子どもの頃のおもちゃ箱を久しぶりに開けたような感覚の作品だった。
 主人公はオクラホマの男子高校生ショーンとビック、日本からの女子留学生ミキの3人。ティーンの経験する甘酸っぱい恋とアイデンティティーを模索する心の旅を日本のポップカルチャーのエッセンスを取り入れて描く。しかし、本作はただの青春映画ではない。中年以上の観客の心をつかむシーンがあったり、失われつつある伝統文化の大切さを訴えたりする。劇中、声を上げて何度も爆笑しつつ、不意にホロリとなりそうになった。おちゃらけ映画の様相を見せながら、奥深いテーマを持つ、侮れない作品なのだ。

日本への愛があれる青春映画「Iké Boys」  © Shout! Studios

 本作で場面をさらうのは、道場主ニュートを演じるビリー・ゼーンと彼の妻レイコに扮した釈由美子。ゼーンの、いわゆる「日本かぶれ」な米国人キャラのなりきりは、「いるいる、こういう人!」とスクリーンにツッコミを入れたくなるほどリアルだ。そして、彼の持ち味とも言える、シリアスだけど、なぜか笑えるナチュラル演技が絶妙のコメディーシーンを作り上げている。ショーンに秘技を教えるシーン、クライマックスのネタバレするシーンなど、ゼーンにしか表現できない独特の空気感が漂い、作品を嫌味なく面白くしている。
 釈の起用は、彼女の出演作「ゴジラ×メカゴジラ」(2002年)を見た本作の監督のチョイスだったという。登場するたびに清楚(せいそ)な印象で観客を魅了する釈は、どこかミステリアスな雰囲気を持つ澄んだ声の持ち主。レイコ役に釈を選んだ理由に納得する答えがクライマックスに待っている。
 実は、私が本作を気に入った要素は他にもある。高校時代に一目ぼれした海外ドラマの主役の少年にショーンがソックリで、映画を見ながら当時にタイムスリップしたような気持ちになり、昭和の特撮やアニメを彷彿(ほうふつ)とさせるシーンが繰り出されるのを見てノスタルジックな気持ちがさらに深まったところで、ショーンの父親が息子に向かって言うセリフにノックアウトされた。「大人になるというのは、変わるということだって言うけど、実は変わらないんだ。自分はずっと自分のままなんだよ。お前はお前のままでいい。俺はお前らしいお前を誇りに思っている」。人生折り返し地点を過ぎた私の心に突き刺さった。
 Iké Boys オクラホマの高校生ショーンと親友でインド系米国人のビックは、日本の特撮映画やアニメの大ファン。日本人の女子高生ミキがビックの家にホームステイすることになり、2人は大興奮する。ミキの到着早々、3人は日本映画のビデオを見るが、それが彼らの運命を変えることに…。
 Amazon, AppleTV/ iTunes, Google/YouTube, Xbox Movies, Vudu, OnDemand, DirectTVなどで配信中。 (はせがわいずみ)

Leave a comment

メールアドレスが公開されることはありません。