初めての発表会で点前を披露する生徒。左に立つのは司会のレイチさんとゾーイさん

 ロサンゼルス南部セリトスのホイットニー高校に新設され話題になった茶道部がこのたび、初の発表会を開いた。学校区の教育関係者や家族ら約50人を招き、日頃の稽古の成果を披露した。
 日本語教諭のキンバリー・スズキ先生が開会を告げ、司会と解説担当の生徒ゾーイ・フォックスバーテンさんとレイチ・グチエレスさんに水を向けると、2人は「私たちが学んでいるのは『おもてなしの心』」と茶道の心を説明することから始め、その歴史や道具、作法を解説した。発表は2回に分かれ、生徒は着物や浴衣を着用し、亭主、正客、次客—といった役割で点前のデモンストレーションをした後、来場者に抹茶と菓子を振る舞った。

着物姿で来場者に菓子と抹茶を振る舞った

 生徒の発表を見つめる客席の中にはスズキ先生の前任で2020年に引退するまで同校で日本語を教えた前教諭アイリーン・トモコ・オオヤマさんの姿もあった。シニアとジュニアの生徒の中に「自分が教えた生徒がいる」と目を細める。オオヤマさんによると同校には長年の日本語教育と熱心な生徒の伝統があり「私が赴任した時にすでに日本文化のクラブがあって、生徒はいろいろなことをしていた」と話す。他校で「日本クラブ」というと日系人主体の集まりであることが多いが、ホイットニー高の素晴らしさは日系以外の多くの生徒が、とても熱心に日本語と日本文化を学んでいることにあるという。過去には全米ジャパン・ボウル(日本語を学ぶ高校生がクイズ形式で日本語と日本の知識を競う大会。毎年春に開催)の全国大会でワシントンに行き5位に入賞したり、日本の架け橋プロジェクトとつながって日本に行ったりしたこともある。同校の日本文化部「心から」に新しく茶道部が加わったことで、ますます生徒の活動の幅が広がったというわけだ。
 茶道部の稽古は表千家同門会米国南加支部の岡添宗幸教授と河井宗沙教授の指導の下、昨年4月に初稽古を行い、新学期の9月からは定期的に続けてきた。岡添師は「月に1度だけの稽古だったが生徒は一生懸命に勉強してくれた。稽古を通じて、茶道は儀式ではない、形はあるが一番の目的はおいしいお茶をお客さんに飲んでいただくことだと、毎回伝えた。本日は全て生徒が行った。ここまでできるようになったと、生徒を誇りに思っている」とたたえた。発表会の終了後、1年を振り返って生徒のロザリーさんは「動作を覚えるのが一番大変だった」、同アンジーさんは「私は覚えた後に、正確に行うことに気を使った」など感想を述べたが、どの顔もやり遂げた満足感に輝いていた。
 なお、同茶道部の新設には、日本文化の理解振興と日本語学習の普及に注力する日本領事館と、日本語と日本文化の指導・教育のためのプログラム「Japan Enrichment Grant (JEG)」を提供する南カリフォルニア日系企業協会(JBA)が協力した。また和服に身を包んだ生徒たちはこの日、和装事業を行う「ミタ・スカイ+ミタ・キモノ」の「足袋スポンサープログラム」を通じて受け取った真新しい足袋を履いて発表会に臨んだ。同プログラムは和装に欠かせない小物ながら見落とされがちで、また当地での調達が難しい足袋を、日本文化のイベントや成人式、学校における「日本紹介の日」などの主催者を対象に提供するプログラム(https://www.mitasky.com/s-projects-side-by-side)だという。
(長井智子、写真も)

昨年発足し第1回の発表会を行ったホイットニー高校茶道部の生徒や教諭、指導者ら。日本総領事館のスタッフも駆け付けた

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