今回の日本滞在では梅や桜の花をよく見た。つぼみが膨らんでピンクがかっていったかと思うと、咲いてしまえばピンクではなく白くなるソメイヨシノ。この色が変わっていく様子はおもしろい。そして並木の中で先に開花する木がある。同じ気象条件なのに、1本だけが。川の両岸、土手などに1本ずつ。これが標本木になるのかな、と思った。その後を追って周りの木が一斉に咲く。リーダー木が大丈夫だから咲こうとでも呼びかけているようだ。咲いた後の風、それも警報が出されるような強い風や雨にも負けないで散る時期になるまで頑張っている。桜の強さを見せつけられた。散り時が来ると風がなくても花びらが散る。地面が白いじゅうたんで覆われる。すると、またピンクが現れる。同時に新緑の葉が出る。追いかけるように濃いピンクのしだれ桜が見事に咲く。一連の流れをこれほど眺められたのは初めてで興奮した。1カ月は楽しめた。遅い春の岩手ではあったが、例年に比べたら10日以上早い開花だった。
花をめでる平和な気持ちをそがれる事件もあった。自衛隊のヘリコプターが消えた事故、北朝鮮のミサイル発射や首相の演説会場での爆弾事件。世の中不可解ではあるが、気持ちを不穏にさせる事件が続くのはめいってくる。花が咲いていてくれて良かったと感謝。
ロサンゼルスのスーパーマーケットやレストランにも置いてあるのでご存じの方もおられると思うが、地元の酒「南部美人」がコロナ禍で工夫を凝らして頑張っていた。近所の知り合いの息子さんがパティシエとしてパリで修業してきた後に、東京で店を構えていた。その2人がこだわりショコラに南部美人をコラボさせた商品を開発販売、さらに地元名産の南部せんべいとショコラをコラボさせた「チョコ南部」を監修発売して、東京にいながら岩手を売り出す工夫をしていた。若い人たちが頑張っているのを見ることは、花が咲いたのと同じに気持ちが華やいでくる。
30年ぶりに来た桜の季節。以前は満開の時だけ「咲いた!」と騒いでいたと思う。今回は、固いつぼみに向かって咲いて!と思いながら眺めた。いい春を見させてもらった。(大石克子)
