AI戦士を強烈な存在感で演じた渡辺謙  © 2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.

 映画好きの米国人10人に聞いて渡辺謙を知らない人はいないだろう。どの映画に出演しても、どんなに出演シーンが短くても、彼の存在はスクリーンから強烈なオーラを放つ。
 新作映画「The Creator」で渡辺はAI戦士ハルンを演じている。主人公の妻マヤを守りぬく忠実で勇敢なAIだ。AIを敵視する人類の軍隊との戦闘シーンに登場し、場面を緊迫した雰囲気で満たし、見る者を緊張感に包む。ともすれば大げさでしらけてしまいそうだが、彼のドラマチックな演技は非常にリアルで、その世界にわれわれを連れて行ってくれる。鎧(よろい)のような衣装と侍のような動きは、まるで時代劇を見ているようだった。それもそのハズで、監督のギャレス・エドワーズは、日本映画の大ファン。本作の参考にした作品の一つに「子連れ狼」を挙げており、軍の指令を裏切って子連れで逃亡するというストーリーはまさにその焼き直しのような様相を見せている。

人間の子どものようなAI、アルフィーと旅をするジョシュア © 2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.

 日本語がそこかしこに登場する本作だが、それらのほとんどが、おかしな日本語だった。大作なのだから、予算がないわけではない。日本映画が好きなら、そうした点にもリスペクトをしてほしいものだ。相変わらずのハリウッドの敬意の欠如にあきれた。
 本作で題材にしているのが、AIと人間の関係。AIに対する討議が過熱する中での公開は絶妙なタイミングだ。劇中、AIと人類の深い絆が描写される。人間同士だけでなく、人間と動物の絆も描かれる。人間は、血が通っている相手だけに友情と愛情を抱くのか? 日本人の文化の礎である神道では、全てのものに魂が宿っていると考える。そのため、機械にも魂があるという考えを自然に受け入れることができる。以前、ヒストリーチャンネルの取材を受けた際、「西洋の文化は、機械は人類を攻撃するものと考える節があるが、日本は対照的に人間を助けてくれるものと考える」という話題になった。「鉄腕アトム」や「ドラえもん」を生んだ国・日本は、お助けロボットのアイボやペッパー、アシモを開発した。一方、西洋人は、映画

危険を伴う警察官の仕事はAIが担う © 2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.

「ターミネーター」に代表されるように、マシンが人類絶滅を図る懸念を心に抱きがちだ。本作でも、西洋人(米国人)はAIを敵視し、東洋人はAIに愛情を抱き、共存する様子が描かれている点が興味深い。ただ、残念なことに、特殊視覚効果に力を注ぎすぎてか、人間を人間たらしめる部分とは何なのか、慈愛を持って人間に接するAIを通して人間性とは何なのかを問いかける部分がごっそり欠けていた。ロボットと人間の関係を描いて、人間性について観客に深く考えさせる作品、TVドラマ「GALACTICA/ギャラクティカ」を超えることはできなかった。
 The Creator 元特殊部隊の隊員ジョシュアは、妻マヤの行方を知るためにAIが占拠する地域への潜入任務を受け入れる。厳重な警備網をくぐり、人類を破滅させる力を持つというAIの創造者がいると思われた場所には、幼い子どもの姿をしたAIがいた。マヤのことを知るそのAIをアルフィーと名付け、ジョシュアはアルフィーを連れてマヤを探す旅に出るのだが…。
(はせがわいずみ)

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