日系米国人のコミュニティー新聞の未来について展望を語ったパネルディスカッション。左からモデレーターのテレサ・ワタナベ、脚本のエレン・エンドウ、日米タイムズのタグマ・ケンジ、ジョン・フナビキの各氏

 ドキュメンタリー作品「Paper Chase : Vernacular Newspapers(新聞の探求—日本語新聞のレンズを通して見る日系米国人の歴史)」の初上映会が10月16日、全米日系人博物館(JANM)のタテウチ・デモクラシーフォーラムで行われた。映画は1895年にハワイで始まった日系のニュース出版が、全米の日系米国人コミュニティーで重要な役割を果たし続けてきた理由を探求している。
 サンフランシスコ州立大学ルネッサンスジャーナリズムの創設者ジョン・フナビキ教授は上映後のパネルディスカッションに参加し、日系米国人のコミュニティー新聞の未来について展望を語った。午前中のパネルには他に、モデレーターのテレサ・ワタナベ、脚本を執筆したエレン・エンドウ、サンフランシスコの日米タイムズ出版編集人のタグマ・ケンジの3氏が登壇。午後の回のパネルには羅府新報のグエン・ムラナカ総合編集長も登壇した。

ドキュメンタリー製作について述べる脚本のエレン・エンドウさん

 70年代ごろには高齢化と移民の減少により将来に向けて縮小していくと語られていた日系米国人のコミュニティーだが、それは「むしろ多様さを増しながら拡大していると考えるべきだ」とフナビキ氏は言う。1世、2世、3世、4世…、異なる民族との結婚による「ハパ」の系列、ブラジルやペルーに住む日系人、さらには、一例を挙げればLGBTQのような、特定の共通項で通じる人々がおり、互いに興味をもっている。これらを包括した「多様性」と「グローバル化」を日系米国人コミュニティーのメディアが広がる要点として説明した。
 またもう一つの論点として、全ての「People Of Color(有色人)」やマイノリティーの人々が現代の米国社会で直面させられている社会的不公正の問題に言及した。新型コロナウイルスに基づく無差別なアジア人憎悪や、ブラック・ライブス・マターなどの運動、国境地域における移民の取り扱いまで、米国社会では昨今、人権問題が注目されている。戦時中に、米国籍でありながら日本人の子孫というだけで遂行された強制収容は、80年代に国家が間違いと認めたにもかかわらず、外見で判断されて憎悪の攻撃を受ける現代の、パンデミック下のアジア人憎悪と共通点がある。
 ムラナカ氏は「2020年、私たちは、子どもたちが突然学校にもどこにもいけなくなる状況を経験した」と語る。戦時中に強制収容された子どもたちが体験したこととの類似は、「ジャーナリストとしての新たな観点をもたらした」と語った。
 「コミュニティーから生まれたメディアの意義は、コミュニティーの声を読者に返すことにある」とフナビキ氏は結んだ。

午後の上映後に行われたパネルディスカッション。左からモデレーターのテレサ・ワタナベ、脚本のエレン・エンドウ、羅府新報のグエン・ムラナカ、サンフランシスコ州立大教授のジョン・フナビキの各氏

 今は6紙のみとなった日系新聞(英字)の中で、邦字面がある羅府新報は特異な存在である。コミュニティー固有の情報の共有、喚起に役立つこと、また、アメリカンドリームという目標に向かって日系人を応援することがコミュニティー新聞の使命であるという示唆を受けた。映像の言語は英語だが、日系人の歴史に興味がある日本人にもぜひ見てもらいたい。
 「ペーパーチェース」は今後も巡回上映を予定。次回は13日(土)にウエストコビナのイーストサンゲーブルバレー日系コミュニティーセンター(1203 W. Puente Ave.)で上映される。時間は午前10時半と午後12時半の2回。マスクの着用が義務付けられている。入場は無料だが事前登録が必要。予約は映画を製作したゼントク財団までメール —
 paperchase@zentoku foundation.org
【長井智子】

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